さくら報告
【さくら報告】
女房との二泊三日のさくら見物旅行から、昨日深夜に帰ってきた。道南に行き、それから津軽海峡を渡るという、北上径路のさくら前線にたいし南下する逆行の旅程。
一日目は札幌→五稜郭→木古内と電車を乗り継ぎ、そこから路線バスでたぶん北海道屈指のさくらスポットと呼ばれるだろう松前城公園へ。洗練されて瀟洒、しかも風景展開力のある城の空間のそこかしこに、見事にさくらが縦横していて、染井吉野も満開だったが、他の八重桜、山桜も見ごろで、染井吉野中心主義ではない北海道のさくらの野趣を満喫した。それにしても松前ぜんたいが綺麗な街。お昼は城内の茶屋ふうの店で、田楽みそをたらした淡い味のおでん。
往路を逆にたどる帰路で函館のホテルにチェックインしたのち、市電で市内を横切って五稜郭の夕桜見物。タワーにものぼった。女房が映画館の知り合いからゲットした情報で五稜郭近辺の「炭小屋」という店にゆく。燗で冷えたからだをあたためながら、山菜の天ぷら、戸井まぐろの赤身など。
二日目は5月11日に廃線になる江差線に、全国から来たテツとともに乗り込む。函館、木古内という経路は前日とおなじだが、ほかに選択肢がないのだから仕方がない。車窓を半開にして、たぶん両面テープで桟にくくりつけたデジタルカメラをずっと動画録画状態にして車窓からの風景流動をとらえていた、札幌から来たテツ氏に、「天の川」駅のエピソードなどを教えてもらう。山中を抜けて海岸線へ出たのち終点・江差、テツたちが沿線の撮影スポットを物色するため眼を血走らせてUターン移動するのを尻目に、こちらは江戸時代からの街をのんびりと見物。とはいえ江差は木造建築の価値に最近気づいたようでレトロな街づくりが「あたらしい」。昼に喰った「やまげん」の蕎麦が旨かった。
江差からまたも木古内にもどり、こんどは海底トンネルをくぐって青森へ。チェックイン後、女房とそれまで行ってなかった旧漁師町・色町の「本町」あたりをうろつき、夜は「浩庵」という焼き鳥屋の雰囲気に惹かれて中へ。廉価なのにすべての焼き鳥が旨く、サラダや煮込みなどは旨さに加えて分量がやたら多かった。この日も夕方が冷えて熱燗。
三日目、まずは青森の朝市で海鮮丼。ぼくは雲丹帆立、女房は鉄火で、たがいの具を交換する。この日は東北最大のさくらの名所のひとつ弘前城公園へ行くのが目的だったが、女房が前日、青森のグルメガイドブックで調べてチェックしていた「みんぱい」という中華料理屋にまず行ってしまう。「昼は混雑する」と駅前の観光案内所で聞いたためだ。陳建民の弟子筋の店らしいが、気取らない地元民のための店。ふたりしてエビ蕎麦、担担麺を食べたが、サイドメニューの油琳鶏の物量が凄い。おかげで夕飯が食べられないほど満腹になった。それにしても「食べてばかり」。
肝腎の弘前城公園は、染井吉野が散り、お濠の水面に白い花びらの絨毯をひろげていたが、遅咲きの八重桜、枝垂れ桜が満開。とくに本丸内は枝垂れ桜が延々とつづく、体験したことのない光景だった。枝垂れ桜は柳より藤に似てみえる。それにしても弘前方面の各駅列車、城内ともども、大混雑。染井吉野の花期が全国からの見物客を迎えるとすると、遅桜が力強く咲いた昨日(ピークの一週後)は地元民の見物が中心となっているようだった。ふと耳にする女子高生世代の東北弁がかなりディープ。帰りにアップルバイを買って、古本屋をひやかす。
青森空港から新千歳にむかう短距離飛行機で仲良くなったCAさんがすごく綺麗でしかも性格が良さげ。ひと目惚れしてしまった。それもふくめ、ともあれ、さくらにはいろいろ接することができた。まあ、札幌にいたままでも満開のさくらには接することができたのだが。