廃嫡
【廃嫡】
廃嫡になるとレールが除かれ
ようなき途が山野をめぐりだす
欠けているのに通路とみえて
いまだにこちらとあちらが
あおあおとむすばれているのは
列車のまぼろしをとおすため
やがては道のぜんたいが
ほぐした血管をおもわしめ
むげんにつながる車輛でとまると
斜面に自生していたカタクリの
わびしい淡紫もみられることなく
なびきよせる音となるだろう
ゆけない一線をゆくことが
風光のなかにのみ担保されて
海岸のみえだすカーヴまで
おもいのえがく推移がうつろ
かつて駅舎にあった蛇口も
装備ではなく天からさしだされ
みずをふくもうとかがむ背が
欠けていても通路とみえる
あまのがわの先、江差は
塩のとおさでしろくひかる