傾度
【傾度】
本にむけひざしがとどまると
そこに坂道が透けてみえる
いれた付箋がなだらかに
かさなりゆく傾度をなして
やがて本のたくわえたひとが
うっすら紙背をはみだしてくる
ひとのうごきが磨きだすのは
ありそうな町「西日」
角度と目とをふくむ町名だ
おもいちらしてもふかしぎで
あの坂はどこだったかと
いやましに息があるいてゆく
いうなれば平坦の不在が
本ともいえる地をもりあがり
こもれびゆれる傾度にみえ
そのいきおいのまま往来もある
そこにわたしは息をころして
ひびきよぎる同類をながめ
なつかしさを死へとかたむける