アジサイ喰い
【アジサイ喰い】
たえず緯度の老齢で
紡錘の絞められる北地にも
ようやくいろづきだした
聖水たたえる球を
えらばずにほおばってゆく
ふとどきなやからがいて
しかも球型と淡色とを
もとのままのこすのだから
くれの秋その葉蔭までは
しずかな未遂の亡霊がうかぶ
くちをもやす花喰いびとにあり
ぼろまとうアジサイ喰いは
ふくみあやまる毒でくちを消し
かち色の身もしずめながら
ゆきかうだけをくりかえして
まぼろしなすその挙動から
不審な珠などあふれしめ
つながってゆくひかりみな
ひとしく狂れだすよう
よわさをそこへ火ともす