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北海道新聞文学賞を受けました ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

北海道新聞文学賞を受けましたのページです。

北海道新聞文学賞を受けました

 
 
本日の北海道新聞朝刊に、第48回北海道新聞文学賞の受賞結果が公表されました。ぼくは去年出した『ふる雪のむこう』(思潮社オンデマンド)で詩部門の本賞をうけました。1面に結果をつたえる囲み記事、22面にはぼくの写真付きで、受賞者インタビューがけっこう派手に載っています。
 
ぼくのインタビューは新聞記事らしく簡潔化され、すごく読みやすくアレンジされていますが、選者三人中、笠井嗣夫さん、松尾真由美さんおふたりの選評が見事にゆき届き、詩集の勘所をつかんで、たいへんに感謝しました。授賞式でおふたりに会えるのがたのしみです。
 
『ふる雪のむこう』の意義は、二行五聯の定型性をもつことで、それぞれの詩篇がみじかいという、この物理的な条件そのものだとおもいます。詩のみじかさこそが詩の強圧をほどく。いま読んでいる「現下」の、全体に占める部分性が、したしく身体に意識されるためです。
 
おなじ形式の詩篇が、余白たっぷりの見開き空間を単位に、淡々とならぶ。しかもことばの個々が雪の現象をひきよせながら、わかりやすい把握にむけては「的中」しない。ふる雪のゆれ。余韻。あいまい。換喩。「これはなに」という驚愕。これらが綜合されて再読誘惑性を発現するのだとおもいます。むろん雪の季節、空間が、身体を基盤に微分され、雪そのものの季節変化も微細にたどられてゆく。そこへ詩の作者の孤独がぼんやりと浮かぶ。
 
オンデマンド詩集は詩壇の鬼子とみられる面があるとおもいます。私家版の切実さもなく、なにかを「早上がり」におさめてしまった不埒さがにおう。それでも近藤弘文さんの『燐の犬』が第二回エルスール財団新人賞を受けたのにつづき、ぼくの『ふる雪のむこう』が今回の栄誉をいただいたことで、「賞をあたえてもよい」と、だんだん社会的(詩壇的)な認知ができあがってゆくのではないか。自分は今後もそんな呼び水になれればいい、とおもっています。
 
詩集一般は書店の詩書コーナーでは、一部の例外をのぞき、ほとんど売れません。みずからつくりあげた詩集が、ほぼ詩壇内でのみ、互酬というかたちで相互流通しているにすぎない。市場は極端に閉じています。書店で売れないのなら、ネット注文によって詩集がオンデマンド配本されるだけでも充分でないか。けれども、やはりこの見識には「詩の権能」にかかわるニヒリズムがまざっているかもしれません。
 
思潮社オンデマンドでのいまの最大の「事件」は、むろん宮尾節子さんの『明日戦争がはじまる』にたいし、ひろい層からの注目が生じたことです。しかもそのオンデマンド版オリジナルが再編集されて、このたび集英社からの詩集になるようです。これはむろん現象的には「昇格」ですが、そのことで、もともとのオンデマンド詩集の謙譲的な「呼び水」の性質が、逆にくっきり確定されるのかもしれません。この「呼び水」を可能性、潜勢力といってもいいでしょう。
 
「市場」にみえないもの。それでも、敬意と、愛着をしるすことばがあれば、ひとからひとへと、さらにひそかにわたってゆくもの。そうかんがえて、「オンデマンド詩集時代」への移行を、ぼくじしんはあらためて肯定的にとらえたいとおもっています。『ふる雪のむこう』ののちさらにオンデマンド刊行化となった、ぼくのあたらしい三部作『空気断章』『静思集』『陰であるみどり』にも、これを機に、アマゾンで注文するひとがふえればさいわいです。
 
 

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2014年11月11日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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