自転車に乗って
【自転車に乗って】
飛ばなくちゃならないものを
投げる手前で断念する
私を ピアノ線を複雑に織り込む
あげていたいドブ川の川風に
深夜の洗濯物がひるがえれば
ヘッドホンのなかから木の実が
脳髄灯せと転がってくる
ころん、の寸前の 棒体脱色
川風の脇 自転車を乗る
川風のひとりとして自転車を乗る
軍属、両手一杯に呟く
「阿部山くん」「はい」
「阿部沢さん」「はい」
地上の四の五の。
継続だけでなく配置が問題で
むなしくなれば夜が
私の管を伸びた けれど
みみずの一種だって、自転車は。
ひからびて死んでいるよ、
あけがたからちょっとの間に
「おまえを鉄の味方のなかに
リボンをつけて
蔵わなきゃならないね
好きなひとは好き
と自分を騙し討ちして
線のためにも
自転車を漕ぐ
すいっすいっ、と
コーンは帰り道にこぼした