寂
【寂】
さっぽろの家屋はみな二重窓だから
つよい風で換気扇の鳴るいがいは
ほとんどそとのおとがしないだろう
ましておんがくもきかなくなると
血流音だけが詩づくりのもとを占め
しずかにただころされてしまう
はなとうとすることばを吸音する
このからだがもののはじめへの
ありえない除外例となるのだ
しずかにころされてしまいながら
ころされあうあかしの等間隔を
ことばのとける列なりにつけたすと
一音ですむ情けなどとうにおわり
つづきでこそおとを統べてゆく
さび声が寂静をとおりすぎる
羽化の鳴るとじられた虫に似て
うちがわのみがひかってあわれだ
おとの臓腑がすきとおってくる
おとにながめのあるさまもゆれて
みるからに入寂へみちびかれる