棒
【棒】
たとえばとおくへのびるながさを
この詩の棒で倍化してはかるときに
えられた倍数が喩となるというのでは
ぎゃくに詩は厳密でなくなるだろう
この棒そのものがのびてとおくとむすび
ながさがながさでさえなくなる魔法が
ながさとみえたもののむしろ実質であり
それも詩の棒のおよぶべき範囲なのだ
そうした範囲はいつでもあいまいで
ふれあうことがたえずはるかへのびる
おもしろいゆきぐもなど天になくて
ふきあれる土手で棒をまるくふるひとは
身の丈でおのれがなんの原基でもなく
ひとつのかぎりある回転だとしらせ
はつでんにならないはつでんをもって
詩の棒がないてゆくすがたもみせた
しぐさの無為のもともとのうつくしさ
うごく棒は遠方に円までうかばせて
ながいものが錯覚とつうじあうひるに
ながさの途中がきえる線をひろげる