門
【門】
紙背にそのまま穴をひらく
門という字のさそいがみごとだ
ないものをふくむ象形だから
それは紙上にさえのらずに
おのれをちがうものとしている
戸口までに植えこみがあり
やわらかくまがるみちが
ひとつの音楽的なながさだと
あるくじぶんをおぼえてしまう
からだはいつも字にゆさぶられる
むろん門が空漠のなかにのみ
しるしめいて建つ悪日があれば
ゆうわくもたかさへとかわり
ひとの脳葉をかげらせるだろう
くうかんを端的に宇というが
春の門秋の門とくちずさむなら
くうどうをきせつがわたって
字ひとつにも宇があるとしれる
左右で奥をかこむ門からは
あいだあいだがとおくゆれる