段
【段】
わたしのおんなには
仮定というものがなかった
あるきながら死物を
ちらしてゆくだけでない
月明のさしこむ段があれば
そこにひかりの巣のあるかぎり
もう天心の月が起源ではない
そのようにそらんじてさえいた
うたではうたいかたが
むろん刻々の仮定になるが
わたしのおんなは詞のならび
いわば歯列にすぎなかった
そこにあることが巣をおもわせる
そんざいのひろがりとはなにか
とおく外階段をおりることが
そのものを銀の花嫁にするなら
わたしのおんなにはさけびながら
みずからゆくくだりもあった
すべて仮定なくしてただみえた
それが踊り場にて停止した