皿
【皿】
つれあいがあがなった皿のうち
とりわけてすきないくつかがある
さんま皿がそのひっとうだが
こないだの小皿も良い載せをする
そこへ木の実などをひろげると
たちまち獺祭となるのだから
かりずまいのかまえそのものも
にすがたで食すことができる
思想のいう星座はむすびのみならず
きえてゆくながれにもみとめるべきだ
それで前節に果てた虫さながらに
ちいさなものをこまごまつまみ
川のながれをとろけて聴いて
さかずきでそれをゆめにかえる
《秋風や模様のちがふ皿二つ》は
こころいっさいをかえた句だが
おわらない冬では皿ひとつに
ただいろいろを載せかえつくし
しまいになくなったそのふかさを
ぼうぼうとみおろすまでになる