妍
【妍】
うすく切ったサケ肉を
こおらせるだけの料りかた
このるいべではなにを
たべているのだろう
しゅいろそのものをあじわい
肉が室温にとけるまえの
ふうがわりな抽象をよろこび
ぐずつきと氷のかんけいや
ふった塩のうまみにもしびれる
あかいあぶらのしゃーべっと
たべることのディペイズマンは
舌の好色をゆうがたにする
たましいが微醺をおびて
皿でのならびを眼福にすれば
ひとからさまざまにわき
とおりぬける妍をかんじる
いのちよりかるいつめたさで
もののりんかくがうごき
あかるい妍を囚えられぬまま
たべるかたちがきえてゆく