容
【容】
わずかに容積はずれている
コップのへりにくちびるをよせ
ゆきの日みずなどをのむと
ふたつのものがうまれてしまう
しさいにみればそれじたいなのに
それじたいでなくなろうとする
うごきがそのままに喩ならば
のまれるごとかたむこうとする
コップのみずのおそろしさは
みずからのなんのくずれだろう
容積のしらしめるとうめいな腑が
のまれてさえ差引無しなのも
すべてうつろのもつうちがわが
そのものとはちがう距離だからだ
ひと飲みにかぎりなく息をつかうと
みずもいろのない香水となりうる
そのことがゆきにふかれるからだに
かなしいずれをたちあげてゆく
かおりをたてるのはゆきかみずか
コップのかたちだとかんがえる