海鼠以下二十句
一生を海鼠が笑ふ俳句性
薄紫篇落手ののちの手の不明
連れ立ちの朝即狆の目鼻飛ぶ
白天に触れんと水ゆ鯉すとふ
水神が水に三柱否百柱
牝鹿埋め来し赤畳横臥村
土母ドボと崩る魔天の下暗し
梅雨荒れや躯容量まま雨に消ゆ
繊花舞ふ厠の思考尿(しと)すれば
別形を念じ鯰に菱を蒔く
歌声の細々(さいさい)として蚊柱や
毒魔羅もつ男子の険や晩涼し
廃村に花粉流れて琵琶妊む
悪運や阿部嘉昭には阿部の雨
交みゐて女の麹を酔ひまはす
デーモンの足消える間をダン再読
暑き葉艶拡がる中を鶸ひかる
黄泉の音重くして耶蘇の乳ずれる
猜疑など闇に賽投げ出目知らず
木下闇鳥目を分かつ吾と虻と