抛
【抛】
たたく棒が神的に球をたたき
おおきな抛物線がうちあげられ
その軌跡が空のただなかへきえる
うたれたものはいつまでも落ちてこず
内野すべてが暮色をかんじ帰っても
わたしら外野はずっと天をみあげ
守備位置をくずさないでいた
そのうちに天上こそ奈落と気づき
ときたま打席の神的なものまで
外野から遠望するしだいとなった
配置にはあけはなたれた門が
ふざいの敵軍や天やわたしらとして
ふくざつにつなぎあわされていて
わたしらがどこにたつのかも
じかんの前後によりわからなくなった
大飛球のときは天がうつわであるかぎり
しずかにとまりそれじたいを時熟する
わたしらの守備はうごかぬままに
たがいのへだてをふくらませてゆき
ほこりっぽい幾春かがさらにめぐった