隣
【隣】
あらゆるものにりんかくのない
おぼつかなさをよろこんだのだから
きっとゆめのほとりにいたのだ
はるかぜがゆるやかにながれれば
からだという陰阜もながれる
ひそかなる斜面とはそのように
みずからを中途にかえるさそいで
そこに杭をたてることなどできない
はえぎわとみえるながめだけが
ものではないものをかがやかせて
しんらのみちたりはみちたりのまま
となりからとなりへ似てしまう
ひとはだにあかるむとなりでさえ
分割のいっさいをうけつけない
フレームのなりたたない網の世を
みたしているのはただの非象だ
みずのわたしはそのくぼみにおち
そこのない桶のなかへはいってゆく
ひそむわたしはうごきにとなりし
ひとのほろびのさなかでゆれる