雁
【雁】
この世のおとを譜に採れば
じかんがみわたせるのだから
曲のひとの眼もおのずから
するどさの鳥にちかづく
みみがあたまを空へゆかす
つばさとおもえばあわれ
かりがねは鍵上にひろがり
とおいかげをつなげる
その帰行にかんじるのは
すべてのおとが世のそとへ
列聖をねがうせまさだ
たたけばあふれだすおとも
双をもといとするかぎり
ありかたがゆらぐほかない
S字結腸のようにまがる
列のおわりがさらなる空を
するどくひりだしている
たどんのかさなりがこわく
曲のひとは波紋学ほかで
かたちの帰雁をしのばせる