紋
【紋】
やなぎがめぶきだして
丈たかく陰気なうすみどりが
ひかりをのみこみつつゆれ
そのまえにも芽吹きはじめた
春紅葉があかく喘いでいた
あるきではうすい寸断が
あるくごと身のめぐりにつづき
せかいの左右もスライスされ
きらきら食べられるかのようだ
しずかにおかしくなってゆく
たとえば黙読のたのしみは
ひとの音韻にじぶんだけの声が
身ぬちひそかに沿うことだが
そんなゆうれいの声が
あるきの左右をせばめて
いっさいは黙読とひとしく
おとをもえるものにしている
しらける陽に炎が紋をなすなど
くうきのなんたる声だろう
しずかにおかしくなってゆく