藤
【藤】
せかいときそうながさで
土ふかい穴の奥へまで
しずかな淡紫でたれている
藤のはなぶさをみたい
たれることが重力にとり
なにかしらの和解だとして
それらはほそいむすめの
たたずまいであるほか
そらをちぶさのゆく
まぼろしもつたえるだろう
おちてゆくそのさなかを
とどめられる法悦は
まといあげる円筒形を
ほろびの通路にして
遺精を透かせてしまう
花ぶさがみだれるならば
そこに穴の藤がかさなって
あることの靉靆もみちる
しらない相同はおおくあり
しらないながさがゆれている