琴
【琴】
ゆみのなかよりあらわれた
いきさつからたてごとは
みずからの奥をひらく
楽器のおかれるところは
もともと淡黄にかすみ
ひとのいるよりさみしいが
はられた弦とすきまが
ボディとしかみえないそれは
うしろをすかすひかえめで
あやうく遠方へさだまり
ゆみのころにかまえられた
なにかのあった前方すら
ただあしもとへながすのだ
そんなながしがなみだに似て
風がうてば女滝がゆれる
りらりらあえぐひびきでは
かすかに草のむかしが鳴って
おりたった冥界ひじりの
べきじょうのゆびのはじきも
しべさながらに風媒のなか