髪
【髪】
洗い髪のずっとかわかない
ようなひととならんでいると
庭さきの夜が良夜になった
ひくく這うこえがひくく這う
うたへかわりどこかをぬらした
ならんでいることはたがいに
しずけく坐りあっておれば
それでもきっと中くらいには
たかくおもわれたのだった
さきの塔がたおれたのか
ゆっくりと風がひろがって
坐るままのたちすがたが
えんがわにふたつ影をゆらし
肩となせるところがふれた
やわらかいからだどうし
ずいぶんながくおもいあった
よるを透かしすこし北へゆけば
白楊の地もあるらしくそこの
どろのきの髪も隣るひとに
しずくをこぼさせてやまない