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感情的な替唄 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

感情的な替唄のページです。

感情的な替唄

 
 
昨日は、小樽の杉中昌樹さんが企画・主宰する詩(論)誌「詩の練習」での岩田宏特集にむけ、原稿を書いた。岩田宏の換喩手法につき論じてほしいという依頼にこたえたものだが、字数の関係で、論というよりエッセイとなったかもしれない。
 
詳細は出来上がりをみてもらうとして、論にもちいた岩田宏の換喩詩の名篇「感情的な唄」、それをさらに換喩的にずらした自作「感情的な替唄」のみ摘記しておきます。この自作は、以前の立教大での創作演習における自主提出版を、いまの技量と感性で大幅に書きなおして成立しました。ふたつの異同を軽くお愉しみいただければ。
 

 
【感情的な唄】
岩田宏
 
学生がきらいだ
糊やポリエチレンや酒やバックル
かれらの為替や現金封筒がきらいだ
備えつけのペンや
大理石に埋ったインクは好きだ
ポスターが好きだ好きだ

極端な曲線
三輪車にまたがった頬の赤い子供はきらいだ
痔の特効薬が
こたつやぐらが
井戸が旗が会議がきらいだ
邦文タイプとワニスと鉄筆
ホチキスとホステスとホールダー
楷書と会社と掃除と草書みんなきらいだ
脱糞と脱税と駝鳥と打楽器
背の低い煙草屋の主人とその妻みんな好きだ
バス停留場が好きだ好きだ好きだ
元特高の
古本屋が好きだ着流しの批評家はきらいだ
かれらの鼻
あるいはホクロ
あるいは赤い疣あるいは白い瘤
または絆創膏や人面疽がきらいだ
今にも泣き出しそうな教授先生が好きだ
今にも笑い出しそうな将軍閣下がきらいだ
適当な鼓笛隊
正真正銘の提灯行列がきらいだきらいだ
午前十一時にぼくの詩集をぱらぱらめくり
買わずに本屋を出て
与太を書きとばす新聞社の主筆がきらいだ
やきめしは好きだ泣き虫も好きだ建増しはきらいだ
猿や豚は好きだ
指も。
 

 
【感情的な替唄】
阿部嘉昭
 
貧民がきらいだ
コンビニや臍出しやニーハイや高底
かれらの暴飲や強引がきらいだ
工夫あるツギ当てや
米を喰って出た極太の棒は好きだ
ハンモックが好きだ好きだ
爆笑
極端な局部
弁舌さわやかな福耳の学生はきらいだ
集音マイクが
すごろく早上がりが
縞が国が根性がきらいだ
メイジャー7とシブヤとダフ屋
らいふるとらいめいとらいふぷらん
もみあげと揉み手と濡れ手と粟みんなきらいだ
接吻と雪隠と拙速と切開
ほげほげ語の爺ィとその碁石みんな好きだ
さんばしが好きだ好きだ好きだ
元カノの
きいろいくちばしが好きだ女の付髭はきらいだ
かのじょらの鳩胸
あるいはハトロン紙
あるいはハット時計あるいはフットボール
またはヘディングやプディングが好きだ
今にもベロ出しそうなしかめっ面がきらいだ
今にも垂れそうなしずくなら好きだ
いい加減なはちみつ
湯加減のげんみつがきらいだきらいだ
午後十一時にママチャリに颯爽とままたがり
おもわず七飯郊外へ出たむすめ
その温んだサドルは好きだ
睡蓮は好きだ吸物も好きだキワモノはきらいだ
ジュンサイや淡彩は好きだ
腓も。
 
 

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2015年06月26日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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