くちなは以下二十句
くちなはが口に縄なし緘黙す
葉自在に世界繃かるる女子(めこ)の眼も
風呂敷や天狗降りゆく八の字寝
陰王にわが龍玉を孵さるる
穂すすきに西王の貌来りそむ
一遍にひかる書中の蜜柑崖
酢くらげを皿より離し髪痺る
八紘に天あるを卑女笑へりき
元寇が手中にありて菊扼す
天族がそこ離(さか)りゆく花変村
常套を着る月下にて線となる
死者粉舞ふ不如意なるかな我王三振
閑かさに耳管ほどけて蚯蚓聴く
句世界に小句燦々バイク事故
Z(ゼエ)と啼く牛二頭にて夕焉る
対をなす六月蜘蛛と女貨の錆
葱汁を呑みて身丈も青の外(と)や
温泉に硫黄男が哭き溶ける
少年老いて少年厭ふ夏の瀞
更衣ひと半袖に溶け流る