狼以下二十句
狼と大君の差を芥子咲けり
狼声に千走る千の錆び鑑
狼が霧にちぢんで灰こぼす
犬霊が狼となる無礼崖
旗に入る狼どもや雲荒るる
将棋盤百千並べる灰海波
いちぢくを剥けり食人兆すまで
畜生と石油の縁や井戸周り
胡坐して千手に錫もつ花乞かな
蓮座には琅玕楼と幻狼と
竹揺つて凶天を摩す滅種狼
血のなかに滅種狼あり網走や
地も滅び狼語残量なくなりぬ
狼の胃のかたちなる花菱や
狼貌の男ふたりの二瓣ばな
孵すものなき狼の胡坐美(は)し
驍将は狼頭巾し視てをはる
狼狂は蠱魔汁このむ色好む
脚とれて滅び野犬のホトとなる
煩雑や盗が走りて百病巣