遊山まぢか
【遊山まぢか】
はなのたよりだけでもこの時期の
ここらあたりがさくらいろにかわる
点の分布ではなくいきている帯が
たてに列島を移動しているとわかる
その帯には叫喚や微醺やかくれがあり
ぜんたいが邪恋でひんまがっていて
なかにいるとだれもがうすあわく
かたるじぶんのまえにじぶんをこぼす
あることがおいかけることになって
それがかおりある回帰だとあきらめる
ひそかにうつくしく同調するのには
ころものゆれるのものぞましいが
数人とかぞえられるかくれでありたく
きみとよばれると興ざめしてしまう
せいぜいがながめのへりに身をゆらし
けんたいのように口端へときどきのぼる
ほどけた第三者でそんざいしていて
しぐさをしばらないのはひとにも
みずからにもたえずおなじだったから
たよりさながらながれてゆくのだ
それにしてもながれは北へとむかう
みやこおちしたひとのむなもとは
風いがいのなかだちでひかっているが
ちいさくかがやきでうずまいているので
そこへたよりがとどこおるにすぎない
なかみよりもうつりゆくがすべて
しかもだまってさだめられたすうにんが
べつのすうにんになりかわるのが
けむりにまなぶにんげんの秘法という
ほんとうはわれわれとはすうにんのこと
うたげではおもいつきを発句しあい
となりびととのべんべつをなくす
しみいるなにかが個性をうばいさり
うえでさくらがひろがっているものだ
かいながうでをよぶありかたの連枝
しゅうだんでいるとみえなくなる
この世のさくら以上にもみえなくなり
不可視のさかいのまじわりじたいが
帯でできたせかいを微醺している
ここらあたりではさくらよりもうすく
おうごんでひかりがなだれるだろう