デュカス
【デュカス】
蹴ぼこりをあげながら
トラがヒョウへと
はしりかわってゆくのを
くさはらのさきとおく
いつまでもみつづけていた
しまもようがはがれ
まだらにとびちっては
そのぜんたいで這うような
うつくしい流線を生じて
もちまえのこがねが
ことさらかがやきだすと
じかんのつづくうち
すがたうつりはともない
オスがメスになるとも
にこ毛がほのおになるとも
にえがめいろになるとも
かずかずをかずかずにして
おぼえまどったのだった
はじめみとめたトラが
ヒョウへもえあがることは
けものの架橋かもしれないが
きたないうなりと牙から
つづられだした総身が
かじとりする尾でおわると
あいだにつばさめいたものが
しらほねのにおいをはなち
しかもはばたきもせずに
きしみわれだすのがわかる
あしもとのくりこみではなく
はしるは体長をくりこみ
たえずあたらしくなりつつ
定規というべきものを
はげしくすてつづけている
トラからなったヒョウは
いつだつをばっせられ
へびをうごきにうめられ
ダチョウを罪にかたどられ
さつりくに静謐をかざられて
追うあとあしにくいこむと
ざんこくがまぐあいへと
またきよめられてゆく
はしるからたべるにかわり
おのれでしかないものに
とりかこまれ号泣するのだ
そうげんは海原のように狭い
おおむかしにみたな
おおむかしのわたしだ
こどもと王もろともだった
輪をなした紐のわたしだ