撮影
【撮影】
全刺青を世界のここに現すために
川明かりするネオンを始末する
蛇ていどの恨みの反映に
使役される映写幕もない
拷問は決して終わらないとくねる
フランク・ザッパのギターのように
小節ごとに角度をつけかえては
それら鬼籍をただ男の背にした
絶後にすぎないものこそが空前となる
絶望の誰何はかんたん
こういえばいい――「絶望だろ?
芒を背後に空騒いだけれども
「映っている光が駄目だ
「近代は光をまだ克服していない
収束とは自身にかかる梯子を落とし
空中の足場のまま動かないことだ
カメラは歩く女を背後から追う
むろん主題は女ではなく背後
それは極東では産卵して変わる
女が男に擾れる筋道もできる
いずれも静かな午後のことだ
運命の落下の代わりに抱く
空中の万の乳房のなかにあって
俺は喰えない玉蜀黍のまぼろし
地味な髭根を垂らすように
時間の女陰にただ花火した
ムーヴィカメラをもつだけ
映写幕が規定するこの昼間を
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今日観たある映画をもどかしくおもって
上の詩篇を書いた。
その映画監督と自分との共有事項とおもわれるものを
ことさら詩にしてみたのだった。
具体性を飛ばすことで詩は屈曲したとおもう。
盛田志保子さんのミクシィ育児日記に書き込んだ短歌も
ついでにこの欄に記録しておきます。
部屋ぬちにきなこを蒔きて幼童の奇しき支配も麹のかをりす