皮膚の心
【皮膚の心】
はんそでのころもをうばわれ
ひふ、だけとなってぼうぜんと
けしきのなかをながれている
ぼさつの掌紋によってまるめられ
かたちづくられうすく鞣された
このまはだかのけいばつのひふは
市電ぞいのあさのひかりをすい
かげのひややかさと日のぬくみから
やけどめくものをむごく負わされ
しずかにもえておのれをゆかしめた
ぎんにひかるすすきがうつむき
はなはぎがはやくもしだれかかり
うつむきとしだれのおおい秋は
ゆくごとに紋をひふへはなつのだが
いれずみがつかのまできえるのは
しろあじさいをまよこへみての
おのれおののくゆえつにつうじる
しらぬてのひらでほのおをつつまれ
おもいださないものはいつでも
寸刻へそんざいをしずめつつ
ときからのえにしをたたれるが
しらぬてのひらでほのおをつつまれ
これはいかなるこぼしなのだろう
むらさきにぼけるアトピーはないが
こころの白癬がひふのつちとなり
ふたつみつきたなさをあらそうので
あかはだかはふくすうをおぼえる
ふくすうはおもいでのげんりだから
やはりひふをつうじてみずからが
あぶりだしのようにずるくかしこく
紙としておもいだされているのだ
このひふにすこしをあたえたい
それがなにかの愛の役にたったかを
こころがものうくあみだすことで
すくなさが域をまるめるのをみたい
きんもくせいのかおりのおよぶ
なまめくはだかのなだらかさ
身にも坂いくつかがしのばれて
おおさすくなさをかわきひとつで
おのれきえゆくまでひとしくさせる