ひかる塩
【ひかる塩】
ウィリアムフォックスタルボット
ひかる塩あるカロタイプもて
石のようなひとをあらわすため
ときのながれなどとめるのだ
はだのさまはひとたびあらくなり
はなれてみえるだろうものも
たまゆらではなくみらいにひろがる
それでまどべをたたずむすがたが
とおいのちにさえいまとみえる
はるかカーテンの透きとたわむれ
もちおもるからだをひねりださせる
その部屋もひとのすみかではなく
ひややかな採石場にすぎない
つかのまの舌たらずのふぜいから
かたちという石をとりだすとき
なにかきららがねむりこんでみえ
いたみで石脈すらきれいにならばず
部位のとなりあいがくだけちる
そんなきまぐれがからだにはひそみ
ひきだされひきぬかれ割愛されて
やわらかいおんがくをうしなう
写真てきなものはそうかんがえて
捕獲のおそろしさにふるえだす
やがては湿板のネガにさだめられ
とあるみなりがこころとともに
なにかの断面になってしまうのは
みることが筒のおくゆきをして
みるものじしんのかなしいからだを
はんぶんかくしているためだろう
しらぬものがからだをひそんで
それがからだよりさらによのなかへ
内属しているとおもいかえせば
断面だらけがひとつ石をなす
ながめのしくみもとくしんされる
幾何学的なあこがれをするなら
この世でいちばんうつくしいのは
いくたりもころされる採石場だろうが
すい槽さながらつらなるのはなぜか
ウィリアムフォックスタルボット
髪のゆれがとまることにないてもいい
あふれる慟哭こそ顔の断面だからだ