ろてき
【ろてき】
とうにしんでしまったせんだつの
ゆめをみるととてもやるせなく
いえでまっているといわれながら
そのいえにさえたどりつけずに
さみしいかわべりをゆきまよった
おわりをみすえてじさつするときが
ひとへのほんとうの時刻だろう
それでもよのなかはすがたをして
昨日の尾へ今日のくちが噛むような
ながれゆくそらをながめていると
ときにとりかえのきかぬ断絶もなく
のびるつんだおさないはるが
いちょうをみあげるけさの秋へ
くうどうのからだをつがいに
つながっているとなみだぐんだ
ひとつがべつのひとつと照りあうと
ときがいきているからだまでもち
井戸汲みをするものがいまもいると
まぼろしにみだれることがある
みずのおもたさであえぐかいなの
そこにじさつがしたたっていた
それよりもしごとしごとのあいまに
しずかな背景のあるなつかしさを
ひとの世のあしぶえさながらに
なにかのしらべとみつめたりした
だんだんに人死がすきとおって
たいりょうの死の実相がみえだす
そうもくそれぞれにゆがみもあって
せかいはかたちからささえられた
蘆笛とはくちをひらくひとらが
ことばのなさをうたううつむきだ
列あるかぎりそこにゆびさせる
しんがりがおわりをはじらっている
ひとはそうしてみえざるをえず
やがてはせんだつになってゆくのだ
なんじのしぬのがわれのゆくこと
わたしはわたしのとうといありかを
ひとによりさまざまにじさつされ
ひとつ身のよすぎで減少にあまんじ
うれえることばでただくくられ
かなしくてとてもみちたりている
ろうそくをわたされて身をふきけす
いやましにくらくするしごとにも
ありうべきひかりのさだめなのだと
かなしくてとてもみちたりている