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鬼没 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

鬼没のページです。

鬼没

 
【鬼没】


喘鳴王の最期はやはり
喘鳴に終わった
気息を日没に病んで
己れのなかをただ歩いた
悪い冗談だ、身中が巷
敷き道の風合は好んだ

喫煙と肺が癒合する
肺は縮み肋の破れ袋
犬が紫になる日暮れは
ゆっくりと煙を吐いて
空の梯子のからくりを
己れに向けて挽回する

老いでは薄い楼閣が
こうして身中に建って
夏蝶を白狂のため舞わせた
着物の裂ける音となり沈む
あまたの葉裏のような王
減算への減算を仕掛ける

揺らぐ半袖が飛鳥だという
飛翔物質を野に数えれば
一日の沈降が鳥より迅い
何事も身を抜ければよく
運命も正面からと定めて
神出なくただ鬼没した

ないのだろう、もう余滴も




ヘビースモーカー詩篇をアップしたついでに。


●田中宏輔さんのmixi日記に最近書き込んだ短歌


わたくしがひとつの場所なら陽光にこの骨の梁、微塵に砕けよ



あかるくて禾原にいま南風(はえ)が充ち地球をはふる往古を葬る



葵公園にて蒼愛も発展す人間犬と犬人間と



少年型サイボーグらが極光を見て凍結後砕いたまなざし





立教の前期授業は昨日でおしまい。
「音楽実践演習」「映画講義」「入門演習」それぞれに収獲があった。
今日は解放感に導かれ朝から長電話と詩書読み。
やがて峯澤典子さんに送っていただいた『水版画』を読了した。

無駄を刈られて綺麗になった言葉が隙間ある空間をつくり
散文性に傾斜しそうなところで詩に反転する。
この呼吸の場所で、彼女の躯がいつも実感される。
生も死も花も風も水も記憶も同一になる場所として
彼女の肉体(つまり言葉)があるのが明白で
そういう詩法を眩しくおもう。
自分もやってみようとおもったら
なぜか上の「鬼没」となったのだった。
 

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2008年07月15日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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