「層」10号
ぼくの所属する北海道大学大学院文学研究科、映像・表現文化論講座の機関誌「層」、その10号ができあがりました。ぼくは2000年以降のエモーショナルな日本映画の金字塔のひとつ、万田邦敏監督の『接吻』(2008)、とりわけそのヒロイン・小池栄子の「顔」を分析する「孤立する顔」という論文を、計26頁にわたって展開しています。本文では映画の細部の分析をおこない、厖大な註記では、分析と現代思想の思弁的な文章とをスパークさせています。本文→註、と二度読みできるアプローチで、そこに現状の映画研究への批判をこめてもいます。
10号の「層」は講座外部からのおもしろい論文が目白押しなのですが、次号からは講座内部を主体とする方向へとシフトチェンジするかもしれません。それはそれでいい。ともあれ、百花繚乱タイプの「層」はこの10号が最後になるでしょう。ぜひご一読を。大書店で注文可能です。発行はゆまに書房。