犬を想像できない
【犬を想像できない】
片目が姿となって
犬を想像できない
南京の夕方では
川岸へ戻ろうとするのを
棒でつついて
水と区別できなかった
気配を感じただけ
ありふれた虹ともいうが
それすら想像できない
夜半の腕に抱えるものも
ただきらきらする
重く濡れた荷物なだけだ
このうえは呼吸とか
横隔膜の上下とかが
想像力の手もとには
ほしいのかもしれない
磁気のようなものだ
けれどもいつかは
はいいろの自分自身が
想像できない犬になって
川面を歩いてみせるんだ
叶うまでは星座となり
天に反ってまわろう
あすの天気だよ、いまは