百日
【百日】
さるすべりの花の
しろいこまかさ
その空中寺院に
内的な鐘が響る
百日というのは
われわれに課せられた
水の澄む受苦だから
あせもにあらわれた
消えゆくものを追って
この翅をみがいてもいい
ちいさく共鳴しては
こんにちは、を呼びあう
丹念なレンズ観察の日々
あなたがあなたであることに
しずかな風が吹いて
ゆっくりと内包も傾く
睡魔だ、骨を叩くのは
しらほね眠れと
呪文が叩き撫ぜるとき
その呪文の起源も淡い
橋のようにまわるだろう
ものみなの連関も
夏にとがったものとして
屋久の大杉ではなく
三陸の鋸を幻想した
涙目に藍があふれてゆく
重いのか暑いのかさえ知らず
直行が疲弊したものとしてのみ
記憶に滲みだす
世界のにしび
旧い美貌は旧く
だから最後の馳走となる