そうでない者
【そうでない者】
わたしのかずがすくなすぎる
なにしろひとりしかいないとみえる
なんのみずべだかわからないみずべを
わたしとそうでない者がならびゆく
そらのいろにみなもがかがやくと
そうでない者のほうになるようだった
あさくなってことばをかわした
入水すれば死にくわれるそのとき
わたしは生身いがい水死人にもふえる
ふたつはからみあってしずんでゆく
そんな充実をつたえようとしても
みずはすぐにまぶたをとじてしまうと
しかり、死の床でもしぬまえを
かたりえないのがさいわいだ
すくなさなど無量の別称にすぎず
ひとつのいまわのあらわれには
そうでない者がすでにながれている