かまくら
【かまくら】
うすい水田を
うきあるく人のはるけさ
うすさとはるけさの融合を
一身にあつめては
空を、並列の孤独で截る。
春隣と秋隣にはさまれて
夏に隣はなかった
ともすれば墜落への天上に
季節外れ、女の琴が
諦念の錦を飾っただけだ
かぜにしき、
天心から頭を引かれて
郵便受のつづくそこを
奥へ奥へと重く訪ねた
地名だろうか――、蔑称?
久しぶり会う人びとの
瞳は白地に紺で描かれる。
稲村ヶ崎、
いちばん海にちかい郵便受が
風に受口をひらくのを
熱せられた夢に幾度も見る
喰われるイチヂク
その総体をおもう以外に
おもしろい物語がない
とおもっていたら 木の電柱が
四つ足で休んでいた。
波が来ている。
カーテンに風が
黒をはこんでくる
白砂として身が暮れて
別の身は希望の減る東に
ぽつねんと残されてゆく
割れた経緯は
それが水でないかぎり
受けるコップもない
もっと休むんだから
最終で帰らんぞお
江ノ島電鉄が海辺をゆき
踏切が最後を鳴る
それを遠く感じながら
人びとは肌の湿りから
ゴールデンジャズを吸いあげる
とうろう、のようだ
真夜中ちかくには
何かが円陣になる と知る
そんな次第で
不意の集まりもわれわれになる
けれども個体の芯は静かで
夜明けには一枚の板へと
均されてゆくだろう
清潔はうすい、と唄うわれわれは
移動する荷台にひしめきつづける