二十吟
彼岸まで千句ほど憂き幅もあり
詩相とは昼のほのほの視えがたさ
のどくろや三界に白なく焼かる
飲食(をんじき)に草を添へては身を騾馬に
まなそこの樹齢を破る無色虹
朝朝に露ある恋のおろかさよ
鰭なくて泳ぐレテとて底は秋
乗る背なき人牛(くだん)かなしや何問ふも
複眼をねがはずもけふ蜂の貌
妊み女やかぜ膨らまず白流る
をみな率(ゐ)て遊山の果てや武具の塚
的なき世かぜ着流して歌となる
明治とは帽子の世とよ絮の原
水と水混ざる他界のなかをゆく
満願にならない曼珠沙華の型
千歳後の倭人伝かなこの俳も
竜飛などおもいて脳裡の風分ける
まぼろしや朝顔鉢の十の花
しろたへの鹿組み伏して綺羅綺羅す
黄金(わうごん)や百寝ののちの我を労(ね)ぐ