二十吟(続続)
白なまず真水を往きて白盲す
白なまず憂き水煙となる世まで
月界に糸の城あり町亡ぶ
貝の引く潮むらさき海の墓
遊女たれ銀の芒の泣き揺れは
海人(あま)睡る鯨なき世の銛ひとつ
産道に流星あつて忌みの明け
都鳥あばらを欠いて朝に満つ
珊瑚死の屍毒かなしき南指す
麩のみ食(を)す一季節あり減我境
灯ともさず暗誦のここ獣あり
絹を着る身に流れそむ砂金川
徒手のまま星井を過ぎて捨身美(は)し
ひそかにて秋うら返る反土星
犬の透く刹那みてゐる午前かな
揺籃期ゆれやまずして身のみどり
偽詩をなす身の荒れ藪を絶後といふ
凝視して秋野の奥が凝りたり
月裏の泪に女群似たるかな
するどさも重さとなりぬ刃こぼれて