FC2ブログ

穴を響かせる ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

穴を響かせるのページです。

穴を響かせる

 
【穴を響かせる】


ずたぼろは袋で、袋はわたしだ。
わたしは河原の行人をとつぜん自らの穴につつみ、
風を聴かせ、それをもって愛とする。
世の中には風穴がいっぱい、
ただ肝腎なのは風と穴すら同じということだ。
それと春に考えるべきは
抽象すれば 内在するこの臓器も
ものものしいけれども機能個性をえながら
それぞれ穴を形成している点だろう。
わたしの内部は星でできていて
その夜空の模様が細かくなればなるほど
愛がやるせなくなってしまう。
だから愛はどちらが他を併呑するともなく
袋と袋がからみあって
それがまるで家というように風路をつくる。
そいつがざわざわ鳴る。共振。
昨日食べたものが いしずえとも知る。
卒業時や七〇年代に内部とみえたものも
穴の概念を活用すればすでに外部となり
内外の弁別が無意味とさえさとって
世界構造もクラゲだの海綿だのに範を移す。
ただようのだ、春のおわりには。
においをのこしたTシャツ(衣料的な穴)に
わたしの空身を容れて
土手などをゆらゆらしながら
気づけば買い物などを達成しているべきなのだろう。
うつす、といえばわたしは
眼瞬きに自分の表裏の刻々を写しながら
いっとき持続して、ひかりの穴に入らされ
身を宗教的なあまりとまでされて
自身が自身の影になっている。
音楽とはこの状態だろう。
わたしの心はわたしの躯を刻々撮影し
世界ならばそうした個別性の超越として
結局は非人称カメラの位置にまで擬制される。
だが本当の撮影とは布教に似て風の行き交いなのだ、
撮影隊はそうして撮影日誌の不意のみをおとずれる。
あるときの蓮華、あるときの李、あるときの菖蒲、
それらが追憶の穴となっては土手をゆれて
天国だの極楽だの浄土だのの厚みがうまれ
結局は眷恋も水郷だろうということになる。
撮影のまにまに交換する、
わたしの像とおまえの像。
像もひっきょう穴だと知って
そんなものを交換の執着にする世の中の
その死後がいよいよせつなくなるが
風とともにあるていど生きればもう
受け入れるべきも死だけなのだった。
愛する者の心臓をつかみだす、
そいつもまた風や星でできていてうれしい。




気づけば草森紳一『「穴」を探る』が出ていた。

著者当人が企画しなかった死後イシューなのは明瞭だが、
草森さんのかつての名著『円の冒険』の円づくしを睨んで
その編者も、多誌に書き散らされた草森エッセイから
「穴」テーマのもののみをえらび
主題一環的な一作としたようだ。

「ようだ」というのはこの本、
まえがきもあとがきもない奥ゆかしさを誇っていて
その出版事情については類推するしかないためだ。
河出書房新社の刊行。
ということは、編者は青土社時代、草森番だった
西口徹だろう。

散逸しがちな未刊行の草森文は
このように丹念に主題系でまとめよ、いう示唆だ。
それほど彼の未刊行文献には贅沢な厚みがある。
同様の編集が後進するといい。

あるいはまるまる一個が書斎だった草森さんの鬱蒼とした住居、
それが死後、有志によって整理されたとき
携わった編集者のあいだで
出版計画が極秘に締結されていったのかもしれない。
いろいろと想像は楽しい。

奥付の初版発行日は本年二月二八日。
河出のことだ、
たぶん朝日新聞などには広告が出されたとおもうが
もうずっと東京新聞購読なので刊行に気づかなかった。

この「穴づくし」の本を半分弱まで読み、
矢も楯もたまらなくなって上の詩を書いた。
これで今回の連作もフィニッシュかなあ。



このGWはきぜわしい。
〆切原稿は書肆山田から出る田中宏輔さんの新詩集、
『The Wasteless Land. Ⅳ』の栞文、
久しぶり、「キネマ旬報」への
横浜聡子監督『ウルトラミラクルラブストーリー』評
(信じられないほど豊かな含みをもった寓意映画だ)があって、
その合間で女房は精力的なレジャー計画を組み
これらを着々と実行にうつしながら
それ以外の日、女房はカンヌ出張に向けた諸事に追われ、
家でパソコン仕事をする。
その女房の傍らで
家事、買い物、録画済TV番組の同伴視聴に付き合わされる次第。

とりわけTVの今期はお笑いがよく、
『サラリーマンneo』の新シリーズがはじまったのに加え、
NHKはさらに意欲的に
芸人に一組一回の大盤振舞で
パフォーマンスの自由な29分をあたえる『笑神降臨』まで開始し
(東京03の回など抱腹絶倒で苦しいほどだった)、
さらにはチュートリアルをホストにした、
『侍チュート!』も絶好調なのだった。

おかげで、まとまった読書はつい昨日から開始した。

今日は昼から思潮社・亀岡さんがしかけた、
廿楽順治、小川三郎との「改行派」飲み会。
昼酒という贅沢がうれしい。
内容が充実するなら
次は杉本真維子、近藤弘文などもさらに面子に加えよう。
ちょうど詩の話を真剣にしたいところだった。



あ、池田實さんの個人詩誌「ポエームTAMA」最新号には
僕の未発表詩篇「江永県女文字の女子」(割と大作です)が掲載されています。
GW直前につくって送ったものがもう詩誌に入って刊行されたのにはびっくり。
今号ゲストはほかに、小池昌代、来住野恵子、岩佐なを、作田敦子諸氏。
池田さんは僕の『昨日知った、あらゆる声で』と
小池さんの『ババ、バサラ、サラバ』も書評なさっています
(並列紹介されるのはこれで何度目だろう)。

「ポエームTAMA」は送料込みで300円。
ご入用の向きは以下を覗けば大丈夫なんじゃないか。
http://www.hinocatv.ne.jp/~planet/
 

スポンサーサイト



2009年05月06日 現代詩 トラックバック(0) コメント(4)

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2009年05月06日 編集

メール、ありがとうございます。

出版の裏事情をご存知のようですね。
僕も本を五分の四以上、読み終わったところで
個々の収録文が
草森さんの明瞭な一貫性の意図にもとに書かれていると
判断しているところです。
初出雑誌がばらばらなところに
執念を感じます。
なのでこの本の目次なども
生前の草森さんのメモにあったものかもしれませんね。
いずれにせよ、出版のさいには
書き足しに継ぐ書き足しで
例のごとき巨大本になっていた可能性もあります

阿部嘉昭拝

> 穴は草森紳一のテーマで自らの企画でありつづけたものです

2009年05月06日 阿部嘉昭 URL 編集

阿部先生。
大変ぶしつけな申し出で恐縮なのですが、阿部先生が現代詩
の現況を概観した編著の執筆者の一人として「文学極道」を
取り上げられておられるの拝見しました。

かのサイトでは、いとう氏というネット詩会に精通した人物
も発起人の一人として名を連ねております。
そこで「瀕死」と言われて久しい現代詩を盛り上げていく一
助として、このサイトに投稿された作品に、時間の許すとこ
ろで、作評を寄せて頂くことはできませんでしょうか?

対価の発生する仕事ではありませんが、失礼ながら「ネット
詩」と呼ばれ中でも、最大級のアクセス数を誇るサイトです。

先生のお考えやそれを知りたい無名の詩学徒の励みもなると
思うのです。御一考願えれば幸いです。

2009年05月07日 松田章吾 URL 編集

松田さんへ

僕にとってたいへん光栄な申し出です。
ただ、僕のキャリアでそれをやっていいものか。

逆提案をさせていただければ
もう何方か、文学極道の詩をピックアップし
批評を書く詩作者を選んで交渉していただき
そうして複数体制ができるなら
僕もその一角を担いたいとおもいます。

ことは重要。
もしよろしければ実地にお会いして
相談させてください

阿部拝


> 阿部先生。
> 大変ぶしつけな申し出で恐縮なのですが、阿部先生が現代詩
> の現況を概観した編著の執筆者の一人として「文学極道」を
> 取り上げられておられるの拝見しました。
>
> かのサイトでは、いとう氏というネット詩会に精通した人物
> も発起人の一人として名を連ねております。
> そこで「瀕死」と言われて久しい現代詩を盛り上げていく一
> 助として、このサイトに投稿された作品に、時間の許すとこ
> ろで、作評を寄せて頂くことはできませんでしょうか?
>
> 対価の発生する仕事ではありませんが、失礼ながら「ネット
> 詩」と呼ばれ中でも、最大級のアクセス数を誇るサイトです。
>
> 先生のお考えやそれを知りたい無名の詩学徒の励みもなると
> 思うのです。御一考願えれば幸いです。

2009年05月07日 阿部嘉昭 URL 編集












管理者にだけ公開する