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学生の傑作を披露します ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

学生の傑作を披露しますのページです。

学生の傑作を披露します

 
以下、入門演習における学生提出物の傑作を
ご披露もうしあげます。
課題は「中島悦子さんのように断章形式で、
ズレを孕んだおかしなものを書け」だった。
うち大永歩さんのものが傑出していた。
それにしてもこれが一年生の作とはすごい。

改行が少ないのでベタっとレイアウトされてしまうけど、
噛むように読まれると、すごくいい味がするはずです。
うん、あすの授業でも褒めまくろう。



【断章】
大永 歩


 金色のトランペットが好きだった。本当は吹いているその子が好きだったけれど、トランペットのほうがずっと好きだった。へたくそな音が校庭いっぱいに響いて、白旗がぱたぱたはためいて。残暑に金がぐにゃりと溶けたら無線機になって、コンデンサを取り替えたらデジタルカメラになった。銀色のデジタルカメラが好き。


 わかってんだ。最寄り駅は東海大学前。出身は大根小学校。そうさ、だいこん小学校ってばかにされたさ。悔しくってくやしくって、でも学校祭の名前は全校投票でダイコンフェスティバル。わかってんだ!


 冷や汁を作りましょう。きゅうりをうすくきざみます。氷水をはったボールにさらします。味の素にみそを少々と練り合わせて、さきほどのボールに落とし入れます。たらこを焼いて皮をむき、それもさきほどのボールにまぶします。木べらでざっくりまぜたら、仕上げにきざみのりをちらして、はい、できあがり。


 言語のあり方は、時として環境に左右される。それは一般に一言語として分類されるものについても同様である。内陸部の民族に『しけ』の概念はなく、沿岸部の民族に『逆さ霧』の概念はない。青森県を中心に寒冷な土地でみられるずうずう弁は、口から発する熱をより少量にするために発達したものである、という一説もある。


 手編みのマフラーをもらった。幼なじみにもらった。白黒で、うすっぺらで、でこぼこで、完璧なマフラー。首に巻いて風呂に入ったら取れなくなった。六月二十日。


 雑木林から光が漏れ、音が漏れている。今日は前夜で、明日は本宮。厚い革はよくしなる。たがはカーンとしていて、ばちが振り下ろされれば、うかれた子供のわめき声も呑まれたおやじの怒鳴り声も意味をなくす。音を創るたび、赤い斑点がつく。神などいない。コバチはガキの、オオドは俺のものだ。


 枯れたもみじが落ちる。もみじを食べる腐葉土。腐葉土を食べるみみず。みみずを食べる鳥。あまいたれをかけてもみじを食べる。これがほんとのもみじまんじゅう。美味。


 昨日な、何も連絡せんとおかんがうち来てん。急に何や言うて追い返そ思うてんけど、カニクリームコロッケ持ってきよったら、そら無下にはできひんやろ。しかしこっぱずかしいもんな、誰もおらんっちゅうのにそない話されへんねん。そのうちおかんも黙ってしもて、どないせいっちゅうねんて……あ、茨城出身やけど?


 人間とは茄子である。漬け物であればなおよろしい。あの何をも浸透させる筋のしなやかさよ! できるなら深く漬けて肉厚の実に大きなしわが寄っていてほしいものであるが、皮がふやけて色をなくしていては意味がない。青紫から白へのコントラストを維持しながらでなければ、それは茄子であり茄子ではない。いわんや漬け物でもない。そして決してうすく切ってはならない。ぶあつくある宿命なのである。それで二きれ、小皿に載せて箸の右に据えれば、人生は完成する。ただし、冷や汁と一緒にしてはいけない。


 人間ボーリング。なに、ピンを立ててボールを転がすわけじゃあない。横っ腹に太いくだをぶっ刺して、中身が出ないようにしてそっと抜くだけさ。それで君のステキなボーリング試料ができる。うじむしがわいているよう祈りながら、やさしく検査してあげるよ。




あ、この欄を借りて宣伝一個。
現在発売中の「キネマ旬報」に
僕の横浜聡子『ウルトラミラクルラブストーリー』評が載っています。
ぜひご一瞥を。

しっかし、日記書きをさぼっていたもんで、三連発日記となった。
何をしていたかというと、ずっと読書だった
 

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2009年05月24日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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