恋記
【恋記】
後日、以下の数首も「囲ひ」となすならば。ばつくれる西風だ、恋記は。
恋記れんき、運転中もフェラチオで環八を。(『ぼくら』/『風の眷属』)
髯が焔のいろにぼけるなら陰毛も貴く哀しむむらさきとする
寝床を鏡に変へられてのち猥王の俺も電磁として捕まつた。
その沖は一氾濫の予感だらう。沖の手前の、開脚を愛す
朝露じたい連山となる芋原でおまへはきつとつかへない蔓だ。
拠点とは瞳のかずよ思へらく、あやめをほしいままにしていま
十人で野をひた流れ十人で裸木に信義の裸形も彫つた
その際は近似値的に謬まれる「真」に女性冠詞もつけて
肛門をみて哀しむを一会のをはりとなして風の穴穴
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またも作歌披露。
このごろはともすると日記記載が滞りがちになる。
以下、簡単に過去の日録をしよう。
金曜日=松江哲明『あんにょん由美香』試写。
そののち、松江、園子温、三村京子らと飲む。
園子温がパイプとゴロワーズで紫煙を流しつづけて参った。
危うく貰い煙草をしそうなところを三村京子が必死で止めた。
しかし園も松江も俺以上に喋る。
土・日=天気が悪かったので家篭りをして
女房と録画済TV番組をみつづける。
『笑神降臨』ではますだおかだを見直した。
椎名林檎の新曲は、
『スマイル』で主題歌として扱われているかぎりは素晴しいのだが、
『Mステ』登場で改めて歌詞をテロップとしてみると
うまくつかめなかった。判断保留。
その『スマイル』はもうドラマとしてはどうでもいいのだが、
ガッキーの可愛さが異常なほどだ
(僕はリタイアしたのだが、女房がみている『スマイル』を
ガッキーの声がするときに覗く)。
しかし『BOSS』の戸田恵梨香の猫背と爪噛みも可愛い。
月曜=授業日。
大教室に行く際、解説するマンガ本を
ジュンク堂の袋に詰め込んでもっていったのだが、
その際、一緒にもっていった金属ボトル型珈琲の栓がゆるみ、
大事なマンガ本が汚れ、激しく意気消沈する。
で、授業も低調に。
ただしあとで研究室に来た卒制指導の平塚亜子ちゃんに、
授業で説明したのと同じマンガ(魚喃キリコ『キャンディーの色は赤。』所収)を
完璧に解説してしまう。
こういう釦の掛けちがえみたいな展開にがっくりくる。
入門演習ではまたもや大永歩さんを褒めたたえた。
今度は彼女がつくったカフカ的な箴言だった。転記すると、
《悪は私であるが、私は悪ではない。》。
この箴言の奥行を、自身にカフカを仮託してぜひ考察して頂ければ。
ここ数日はずっと『短歌ヴァーサス』のバックナンバーと
萩原健次郎さんの詩集をたがいちがいに読んでいた。
『眼中のリカ』、すげえ。
『短歌ヴァーサス』は枡野浩一特集の号も
正岡豊の誌上歌集の号も、月曜帰りのジュンク堂で無事ゲット。
いまふと憶いだし、部屋奥の積ん読本の塔から
短歌ニューウェイヴの趨勢に迫った、
『新星十人』(立風書房)を引き抜いた。
この本、新刊早々に買った記憶があった。
奥付を見ると98年五月。
何と十一年間、積みっぱなしにしていたわけだ(笑)。
今週は仁平勝の句論本三冊を読む予定。わくわくする。
仁平さんは僕のなかでは精神分析本における中井久夫、
詩論本における藤井貞和&瀬尾育生、
犯罪評論本における朝倉喬司、
都市論本における原克、
中国本における武田雅哉のように、
いまや絶対的価値のあるひとになった。
俳句志望者で未読のひとは、じつに勿体ないですよ
あ、そういえば昨日、「ユリイカ」編集長から詩の依頼。
百十行までという。一般誌からの初めての依頼だった。
こういう申し出により自分の生活が変化しだすのを
待ち望んでいたのだった。