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代田物語② ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

代田物語②のページです。

代田物語②


【代田物語②】


水栽培の球根なのか透けつつも腐りへ向かふぼくらの未来



大著のやうに俺のからだが重たくて抱いた途端のきみも枯葉に



四畳半期、真四角部屋でした交を文革と呼んだがおまへは消えた。



女性字を置くべきそこにもつれ果てた蔓ばななのか縞薔薇の乱



べえごまと同じだ まはるめのたまのまはり叩いて世界の夕日だ



性愛に削りがあつておが屑も記憶のために取り合つてゐた



ぶつ放す一身のための空なくてだからオレらは遠泳をした



曲目はパープルヘイズ、ヘイズ氏の10秒のため10秒演奏



一級河川のほとりで二級の性愛をする嬉しさの等々力渓谷



ライラック何とは知らぬ色彩をむらさきとする磊落きたる!




昨日は授業日。特筆すべきは二限のマンガ講義。
マンガのエロ表現につき、限界に挑めた感慨があった。

扱ったのは、江口寿史「はずかしい」(『爆発ディナーショウ』所収)、
山本直樹『明日また電話するよ』中の二作、
何と宮西計三「エステル」の一作目、
それに腹這いになった「紺野さん」が
舌だけで半月西瓜の種をとる(安田弘之)だった。
知らぬひとには何のことかわかるまい(笑)。

卒制指導のあとの帰り、
望月裕二郎くんと石川大輝くんとで飲む。
珍しく女子がいない。
例の池袋西口駅前、もつ焼きの立ち飲み屋。
そういやこの二人の人材をつなぐのが佐藤友衣だったが、
石川くん曰く「元気で働いているらしいですよ」。

望月くんには同人誌「町」をもらった。
「早稲田短歌」卒業生の拠点にするつもりだという。

その巻頭収録の大作詩篇
「すべて可能なわたしの家で」にびびりまくった。
作者は瀬戸夏子という名前、
詩篇内容からしてもしかしたら僕と同じ烏山在住者か。
これもポップで自由、読むと気が軽くなる。
軽くなるのに像を結ばない。
「女子詩」のこの傾向は大・中島悦子以来だ。

女性的抒情に重くたゆたう水の流れを感じさせる
海埜今日子なんかもいるんだけどさ
(彼女のここのところの素晴らしい詩篇は
同人誌「hotel第二章」「すぴんくす」で読める)。

いずれにせよ、秀詩は「予期せぬ方向」から出現してきて、
ここのところの初夏の風が僕には心地良い。
山田亮太しかり平川綾真智しかり
(彼らの詩集についても
時間をつくって詳説しなくちゃだなあ)。

瀬戸夏子については一個聯のみ転記打ちしてみよう
(まずは部分ゴシック化を省略、改行もすべて天つきとする)。



いったい いつまで天気予報を信じてるつもりなんだ
わたしたちのひらいた雨傘の上で逆立ちするたったひとりのピアニスト
電子レンジで焦点のあわない宝石を毎日温める 苦い苦い夕焼け
そう、わたしたちは偶然この家に住んでいただけ
きゅうりの輪切り
コインランドリーの真ん中で蟹がしゃがんでいる
とはいえ 内側から鍵をかけ
浮気性だなあと思い指と指の間にマーカーを何本も挟む
しま模様 こんなに酸っぱくては我慢できないと
幽霊のように逃げだしてきて 2ミリほどの身体でしなをつくる
ひらかれたカラフルな包装 ゆたかなひまわり、
ラジオ体操していると、腹がつやつやに熟す
それが いちばんいい方法なのだと、ちゃんと教わっていたのだった



さて、この「すべてが可能なわたしの家で」には
その多くの聯に適用できる法則がある。
ひとつの聯のなかにゴシックになっている文字があって
それをつづけて読むと五七五七七、
三十一音になるようになっているのだ。
ただしそれはほぼナンセンス短歌というにちかいものだとおもう。
ちなみに上の聯でなら、ゴシック部分がこうつながる。

逆電子夕焼け輪切りしゃがんでる挟む模様はいい教わって



ともあれこの詩篇で気持ちがふわふわになった。
それで冒頭10首をつくった。
今回はとりわけ手早くつくるのが目的だったね

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2009年06月09日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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