めらめらしてる
【めらめらしてる】
サルベイ、辞去を述べる時が来た。世界の中締め、その奥行に
善意が右往左往しているこの段階で。
誰しもの胸郭内のらんぷ
恥辱を灯油にしているそのさまが美しく
サルベイ、炎を吹き消すためのお前の口も
ワシリィ夫人のスカートより漏斗状だ
「われわれの下劣、かなつぼまなこ」
カーテンの襞にそれはありふれている
それは ありふれている
サルベイ、中座を述べる時が来た。
わたしは/くやしいか
この「中座」は芝居小屋めいて それから
或る空間を構成するだろう、そこに。
いなくなったのちのがらんどうの先取り】
カーテンに身を包む(2、3人)、
朝までの居残り組へのあざけり】
隙間が錆だらけ、人間的悲哀の雑魚寝】
ざこ ざこ、「列挙」はそんな音を立てて
わたしは/もう周囲への音響なのか
わたしは体液においてありふれていて
渚に落ちたパンティを撫でようとする、
春の潮のように執拗に白くあふれている
サルベイは/むなしいか
これが わたしの「ありったけ」
天然果汁85パーセントの可疑詩は
まだ残り80行ていどはつづくけど
バレんなよ、わたし、春宵には。
わたしの内部の垂直はバレんなよ。
だから冬服のポケットのなかは
期限切れのパー券だらけにして
サルベイと色つき水を酌み交わす
酌婦 酌男 酌猿 酌犬、みんなまとめて
頬肉が便座カバーか 無意味に優しく。
大好きなサルベイ、ごめんな
以後わたしは芯において煙らねばならぬ
昨日のわたしは宿場で馬を喰った。
馬喰と廃馬の関係が以後 星座のよう
隠匿せねばならぬ、喰ったものは
喰った女は すったもんだは。
サルベイ、ホモセクシュアルな一傾向よ、
げんげ田があふれてしまう蓋然性よ、
眠るわたしの胸板での囲碁は厳禁だよ
(おまえの あいて だれ?)
わたしの夢の輪郭が繊毛となり
屋根裏の絮となるその満願日まで
少しずつわたしは自身を遺漏する
白黒好きなサルベイ、ごめんな
わたしの好みは捻り後背位35度
このみは精確に摂氏と揃えている
そのように少し冷やっこい女が好き、
だったが この二十年の体たらくは。
この二十年、伸び縮みしたわが体毛は。
キャンパスでそれらを不意に吹かれて
夕飯は豆腐、とおもった。それが一昨日。
《初夏のスカートが好きだなあ》
《あるいは積乱雲》《驟雨》《もろもろ》
小数点以下切捨ての超・御免を
振り撒きつつ歩くわたしが恥しい
それを不意に蘇らせての今日の中座だよ
別にわたしは付和雷同
別にわたしは戸別訪問 じゃないが
じゃがいもの抜き取り検査は得手だろう
ばれんしょ、バレんなよ その倦怠を。
わたしもその倦怠によって
絹の肛門をドリル穴状に傷めて
いつも自己回収が明け方になったのだ、
(いつもその時刻にメールも返信してる)
自己回収、脱糞、自己回収、脱糞・・
反復しつつわたしは或る塀に近づく
塀のうえのカフカ(←チェコ語)たちよ
脱皮後に現れる自己に予感の距離がある
サルベイ、わたしの口に最後のジュースを。
二〇〇九年までを今飲み干さねばならぬ
理由は訊くな、果てしない順列組合せを
一嚥下に集約する暴挙とおもってくれ。
これは諸類型の、地母神話の如き一収斂
かように世界はひとりの女の姿となる
同性愛のきみには到底わからんな
往年の異性愛のわたしにも解らなかった
今わたしは同性愛でも異性愛でもない
「愛が足りない」か「あふれすぎ」で
晩年に向け急いで調整中なのだ、
俗情で迂回だらけの、このラジオ回路を
胸郭の隙間が めらめらしてる
メランコロジスト武村さんはそんな風に
メランコリーにつき哀しい冗談をいった
唄ってみる、《ボクハ汚イ ごみスラ漁ル
/キミモ汚イ 愛ヲ間違ウ》云々と。
かぽたん、と胸襟を風にひらく
わたしは愛のロボットだった カタカタ
サルベイは/ほとんどかなしいか
サルベイに特定の立教男子学生の
ありふれた実名を今や代入すべきなのか
二人で歩いた青江以上の「池袋の夜」
メール着信の気配が其処此処に洩れる
〇〇(実名)、なぜ疎遠になったのだろう
「期待」と「忘却」については散々話した
わたしたちはその間の揺れでしかない
べつに葦でも鬣でもよかったのだ、
「中間」を名づけるときの選択については。
あ、サルベイには猿との類似も籠めている
昔からわたしは不完全な鋳型として
猿には敵意以上の神秘も感じてきた
パーティに出向き「一緒の」中座を
ゆっくり演じようとしたではないか、
誰にもわからない緩慢さの。
以後二年は一人の退場を反復するだろう
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