キャンプとジャンク
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これも「省力日記」。
ただし方式はちがっている。
立教の前期「入門演習」で
自分でつくった課題にたいし
自分で提出したもの、
それをまんまここに貼りつけようとしています。
ソンタグ「《キャンプ》についてのノート」(大好きです)を自家薬籠中としたうえで
現在なら「キャンプ」の発展概念「ジャンク」こそを真摯に考察せよ、と説き、
よって「キャンプ」vs「ジャンク」の対応表をつくれ、
というのがその課題の骨子だった。
本来は「阿部嘉昭ファンサイト」に転載すべき文章なのだが、
既報のように現在休止中なので、
とりあえず日記欄にアップしておきます。
生徒さんとのコラボ形はいずれそのときに
(あ、学生マイミクのみなさん、アレンジを加え
自分のmixi日記にアップするのは奨励しますよ)。
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ただし、その前にまた近況報告。
雑誌『d/SIGN』「特集=写真と都市生活」のための
1600字コラム10本は、立教の研究室に資料をとりにゆきなどしながら、
昨日、全篇を無事脱稿。
原稿をメールして編集の小柳さんに褒められる。
どんな原稿を書いたかは秘密。
ただしコラムタイトルだけ小出しにしておこうか。
自由に内容を想像してちょ
1)空の無名
2)ミルクティー
3)ケータイH写真は見えない
4)ハハキギの影
5)女の三枚の写真
6)田をみている
7)大橋仁、組写真の情動
8)瀬々敬久、写真の富を奪う
9)写真を切って捨てる
10)牛久沼界隈
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「省力日記」ばかりやってると
またこの日記欄に作品=詩、を書きたくなってくる。
日曜までにぜひ一本を、という感じ。
今日は涼しいので女房とお散歩です
ということで、標題「キャンプとジャンク」の本番--
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【キャンプとジャンク】
阿部嘉昭
キャンプ《美的語群のなかに糞便も連ね、何が黄金かをわからなくすること》
ジャンク《実際に糞便にまみれ、自らを糞便以下のおぞましいものにすること》
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キャンプ《自分の墜落予感の恐怖を、おおらかに語ること》
ジャンク《すでに墜落している自分を、恐怖なくおおらかに語ること》
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キャンプ《流通可能な「無自覚の自覚」》
ジャンク《流通不可能な「自覚の無自覚」》
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キャンプ《自分に性がないという擬制》
ジャンク《自分に生がないという、「ただそのこと」》
良き趣味《自分に性があることで生じた慎ましい抑制》
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キャンプ《凍りついているものを笑いでほぐす》
ジャンク《笑いそのものを凍らせる》
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キャンプ《独自の、(文化史を経過している)脈絡》
ジャンク(1)《脈絡のなさが一切の比較を絶していること》
ジャンク(2)《脈絡がまさに見た目どおりの脈絡であること》
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キャンプ《エネルギッシュな悪食》
ダンディスム《一日の僅かな時間に犯す少量の悪食》
ジャンク《飽食とからみあったことで死にいたる悪食》
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キャンプ《無名性を有名性に語りかえすことに転覆の意志がある》
ジャンク《無名性を有名性に語りかえすことの倒錯に気づかない》
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キャンプ《自分に親和性を授けるための知識の悪用》
ジャンク《知識の不在、もしくは「知識の悪用」の悪用》
人間主義《知の善用》
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キャンプ《親を気さくな同胞と見なす》
ジャンク《親を獣/物体のいずれかと見なす》
良き趣味《親を親と見なす》
(上記の「親」は「配偶者」や「恋人」にも代替可能)
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キャンプ《神なき世に祈ること(その祈りをもわからせず)》
ジャンク《「祈るって何?」》
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キャンプ《過去を追慕する》
ジャンク《現在までもを追慕する(ことでやがて行き着く無時間感覚)》
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キャンプ《優雅な杖によって自分を打擲する》
ダンディスム《優雅な杖によって余人を打擲する》
ジャンク《現実の杖によって世界自体に深甚な打撃を加える――ヴィジョンはない》
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キャンプ《「悪から私が生まれる」》
ダンディスム《「私から悪が生まれる」》
ジャンク《「私と悪に区別がない」「しかも私は生まれていない」》
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キャンプ《楽天的な乱婚》
ダンディスム《修道僧的な荒淫》
ジャンク《すでにして性行為が性行為ではなくなっている》
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キャンプ《神殺しの10年後》
ダンディスム《神殺しの渦中》
ジャンク《人殺し》
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キャンプ《汗っかき》
ダンディスム《汗は生まれてから一度もかいていない》
ジャンク《汗以上に肌から血を流すのが好き》
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キャンプ《出来の悪い怪談》
ダンディスム《出来の良い怪談》
ジャンク《出来を云々できない怪談(発話のレベルがちがう)》
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キャンプ《ポップさに潜む破調》
ジャンク《音として感じられない》
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キャンプ《「阿部嘉昭」というジャンル》
ジャンク《「阿部嘉昭」という生活》
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キャンプ《ビーチパラソル華やかな海水浴場》
ジャンク《死魚の打ち上げられている泥炭地》
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キャンプ《ある日の私》
ジャンク《別の日の私》
(本当の)ダンディスム《「私」なんていない》