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橋の図鑑 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

橋の図鑑のページです。

橋の図鑑

【橋の図鑑】


道がなく橋だけのある
葦や「悪し」の一帯で
私は全身を世界の疲労にとかして
千やそこらの橋をゆく
時間がいつかはわからない

上こそを水の通る四万十の沈下橋や
大水で壊れた大井の木橋、
V字に崩落した酒匂の橋
それでも橋に橋がただつながって
歩くここらが、変にもどかしく

茶色い虹がつたえて、
カフカの金属的な肉声が響く
ほ 牛腸さんの声に似ているな
《私は橋だった 寝返りを打った
私はバラバラになり 刺しつらぬかれた》

保田さんの重厚な咳払い後なら
《さ丹塗りの大橋の上ゆ
くれなゐの赤裳すそひき》
ジンメルの細心なら
《扉はそこから踏み出るとき
橋が与えてくれるような安定感を奪う》
ならば橋が扉の連続状になっている

いずれにせよウォタールーでもみられるものは
いつも《眠るまぎわの 夕焼けに近いもの》だ
少年のように私は人などみていない
象なしでも象の背中が通るから

橋だけを綴ったここには
さんぼん縦線のあの字ももはやない
濡れていて涸れているそこらを歩きまわったあと

立ち方によっては 私が端だろう

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2007年09月13日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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