砂下ろし
【砂下ろし】
月に一回、オフクロが
「砂下ろし」の日を宣言して
蒟蒻ばかりを喰わせた
表情の憮然はそこで覚えた。
瞰下ろして 眼下の雲古に
灰色の砂絵を感じては
月ごとに背の伸びる自分も怖くなる
花田清輝「砂について」を読む前だ
甘泉庭園の端に佇つ
血を巡るものが緑陰、
私と私以外がふれあって
万端がざわざわした、痒い
(七面鳥の首を絞めて
悪童が七色に笑う
(打擲癖の婆さん登場
《お前と食べ物は
箸で渡されているのさ
いにしえから箸は橋だよ
ちゃんと使えなきゃお前が摩滅する》
――婆さん、与重郎めいた機転を
打撲の灰色を愛した
「膚のメダル」と謂っていた
《だがお前、世をずれては
眉間の打撲痕もとれんぞ》
そうだ、拭う指あって だから手偏か
掏って、招いて、拌[かきまぜ]る。
手許ばかりに久遠の根拠、みていたな
地の白に 図の白
レダと白鳥の根拠だ
(そこを)装束が通る、人ではなく