三十戒
【三十戒】
喩けむりは何度でもよい。
帽子をきらきら籠にする。
箱は斜めにゆっくりひらく。
金砂は空間のままにしない。
猫の斜視の気配を察する。
友納氏の苗字をたたえる。
盛土料理にブロッコリーを。
騎手に乗ることで裸馬にする。
自動改札を二分の一回通る。
扇を集め、存在も扇形に。
副知事に海の副地図を返す。
腕から腕へは環礁を渡す。
湾曲を声帯につくり唄う。
無形の乳房に横から分度器。
剪定なき作庭術を模倣する。
頬髯でこの蝋の顔を炎やす。
円は三角にもどしてゆく。
別離に多くの浜辺を暗くする。
椅子削りのスカートがある。
回して弾く楽器を編纂する。
職業簿にこども売りを加える。
りんごを巷の八十一人にわかつ。
天災の字を狂うまで凝視する。
翅などの語の蜃気楼現象に。
おのれだけを驚愕する。
四つ足にした学校の羊毛を憂う。
恋愛のヨーグルト期に円卓する。
登攀で蔓草へ百靴をあたえる。
つかめない鞭毛は画布にえがく。
水銀貨において金持になる。