百合根のうた
【百合根のうた】
百合根をわける、
この手はもう百回目だ
白樺を焚く気がする、
手がわかれてゆく
しろく厚みある幾層に
あまさと旨みが沁み
歳月がほぐれてゆく。
てもとの便り。
おぼつかなさを追う、
手紙のような食が好き
百におよんだあたまが
渓谷の鳩尾にも
かげをあたえている。
だから食がとおい。
さわ、さわと音する
影がはしって
午前は羽毛さえほおばる、
ばらばらにする。
時間は百だ、――眼も
愛したおんなの
貧しいからだ
ちいさな陰阜を
食後まで
すこしかんがえる。