菊名
【菊名】
人名をかんがえるうち
菊名に着く。
うらがわだ、
つまり名をもつ駅だった。
このことが不安定だとおもう。
みればたくさんの小脇が筒をかかえ
曇天下の往来も岐れている。
交差する駅は高架部をもち
階段がポンプなのか
そこに水だって汲まれる。
じょるわ じょるわ
人びとのゆれるなか
きっとにごっているだろう。
すみれみたいな恋の泥
泥を咲いている些細があった。
花新聞をとりだす。
密売の報をよむ。
眼帯を顔におぼえる。
ことばだ、ことば。
春なのに外套だらけ
八卦で行く先が橋本と出て
行く末の稀薄をかんじた。
和歌山にも同名の駅があるため。
そう、ここが和歌山ならいいのに。
駅を仮にして岐れてゆく、
やや靴さきをあおく濡らして
鉄路上の北方へ往き急ぐ。