散る日本 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

散る日本のページです。

散る日本

 
 
女房が昼寝をしていて
何度起こしても起きないので(不吉)、
不吉ついでに近所をひとりで
半時ほど散歩した。

じつは家の四階ベランダからみえる
高校の裏側は
高校と団地の桜並木がある
さくら密生地の絶景で、
きょう実際あるいてみると、
予想どおり
息を飲んでしまった。

ひっきりなしに花びらが降っている。
大吹雪というほどだが轟音がない。
あるいは轟音の代わりに欠落が鳴っている。

道路もいちめん桜の絨毯になっているのだが、
絨毯はときに風に舞って
ふたたび中空へほぐれ
雲霞のように浮上しさえする。

雲の切れ間から日が差すと
それらがきらきらかがやくのだが、
散り敷いたさくらの花弁には
重量というものがないらしい。

だから移動が「有魂」というより
ゾッとするような「無魂」のさまをあらわして
そういうものの妖しく貪婪な動きに捉われ
世界の組成のうち、
どの層が異様に静かなのかも理解されてくる。
桜木には、一木にはみえない魔の視界もある。

花吹雪を自ら分離しつづける桜木とは
それ自体が一種のシュレッダーではないか。
風の誘因というより
自らが自らにこすれて
死の境地まで細かい紙片を
虚空に散乱させつづけるのだ。
それらはこのことに酔っている。

あの紙には原理的に何も書けない。
それ自体が「蕩尽のための蕩尽」を
すでに書いているから。



さくら散る樹のなか狂ふ刃かな



こうしてまた今週末も
さくらの瘴気を浴びてしまった。
生暖かい風のなかにいたのに
体温が下がった感覚にもなる。

家に帰ると、
いましでかしたさくら見の禁忌を受けたように、
女房がしずかに死んでいた。




ウソ
   
 

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2010年04月10日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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